大企業への就職。
それは学生や就活生、仕事を求める人なら一度は考えたことがある道だと思います。
綿密に計画され整えられた新入社員研修、過去の知識が盛り込まれたマニュアルたち、大勢の同期と切磋琢磨して仕事に勤(いそ)しむ社会人ライフ。
そこではたいてい、安定した福利厚生と相場平均以上の給与を受け取ることができます。
特に安定した職を求めがちな日本人としては、大企業へ就職する友人知人に対して羨望の眼差しを向ける人も少なくありません。
私自身新卒から十数年、いわゆる大手IT企業にシステムエンジニアとして勤めていました。
あの頃は、
- 毎年受けられる健康診断
- 毎月振り込まれる給料
- 忙しくて手が回らないほどの受注
など、そのどれもが当たり前のことだと思っていました。
周囲からは「大企業に入れてよかったね」「すごいね」という言葉を受けることも。
もしかすると大企業への就職というのは、他の人からするとうらやましいことだったりするのかもしれない
そしてそれはいつしか、大企業で頑張れている自分は結構すごいのかもしれない、という認識になっていきました。
しかし、そんな憧れの大企業を退職した私がフリーになって思い知らされたことがあります。
今回は、
- 大企業に就職している人をうらやましいと思っている
- 大企業に入りたい、入れない自分を卑下している
- 大企業を辞めたいと悩んでいる
そんな人たちに向けて
大企業を辞めたからこそわかった3つの事実
についてお話していきます。
①整った福利厚生=健康で長く会社に勤めてほしいから
一般企業で働いていると、これまで健康に無頓着だった人も漏れなく全員健康診断を受けることになります。
これはある程度の規模感であれば、どの企業も設けている福利厚生のひとつです。
ただ、大手企業となるとその手厚さに驚くことがあります。
私が勤務していた会社では、
- 定期的な歯科検診(検診後に無料の歯ブラシ、歯磨き粉、歯間ブラシがもらえる)
- 生活習慣病予防のための無料カウンセリング
- 各種予防接種
- 健康診断、人間ドッグ時のオプション(一定額まで支給)
- 禁煙のためのカウンセリング
- 希望の医薬品を受け取れるサービス
- 感染予防のためのマスク、消毒薬の配布(無くなればエンドレス補充)
少なくともこれらが福利厚生(社員の健康保険)に含まれていました。
つまり、無料/タダで受けられる/もらえるサービスだということ。(※もちろん健康保険料を払っていること前提)
私も大手企業に勤めていた頃は同じように思っていました。
しかし、退職してこれらを自分でまかなおうとすると結構な金額になるんですよね。
そして忘れてはならないのが、大企業はこれらのサービスを社員数分負担する必要があるということ。
一人あたりの費用×社員数分の負担です。
仮に一人あたりの費用:50,000円だとして、社員数が10,000人だった場合:
50,000円×10,000人=500,000,000円。。5億!!
大企業の社員は毎月の健康保険料を払えば“無料”でこれらのサービスを受けることができます。
「やっぱり大企業ってお金あるなぁ」と思いますよね。
でもこれ、会社側としては安い経費なんです。
会社負担部分の社会保険料やこのような「サービス」は、「法定福利費」として計上することができます。
つまり、その分税金を抑えられるということ。
- 会社は社員へのサービスとして費用を負担する
- でもそれは経費計上できるので税金を抑えることにつながる
- 社員は受けたサービスによって健康を維持することができる
- 病気などで休むことなく末永く勤労することができる
加えて、社員は健康的に長い間会社で利益を作り出してくれる。
これは、フリーになって会計や税金の仕組みを学んだからこそわかった事実です。
②安定した給与=安定して取られる税金
大企業に働いている人たちはみな、毎月しっかりと遅れることなく決まった口座にお金(給与)が振り込まれます。
個人の成績や部の成績、はたまた会社の事業成績などによって上がったりすることはありますが、よほどのことがない限り毎月の給料が大きく減るということはないはずです。
給料明細には、いわゆる「総支給額」と厚生年金や社会保険料などが控除された(差っ引かれた)「手取り金額」が表記されています。
給料日になれば、社員たちは
「よし!今月はここからあれを買ってこれを支払って・・・」
と計算をし、年末になれば
「年末調整の時期ですよ〜!必要書類を記入して総務や経理に提出してくださいね〜」
という通達を受けて諸々の処理をすることになります。
さて、ここで問題です。
大企業の社員は
自分が一年でどのくらいの所得税、住民税、社会保険料を支払ったか即答できると思いますか?
答えは高確率でNOでしょう。
私自身も大企業に勤めていた頃は、所得税なんてまったく把握していませんでした。
そして、年末調整後に戻ってきた税金を見て「ラッキー」「源泉徴収でこれだけ返ってきた〜」と思っていた始末。。
ここに、安定した給料のカラクリがあるのです。
まず大前提として、源泉徴収は社員から漏れなく税金をゲットするための仕組みに過ぎません。
税金というのは元々、
- あなたはこれくらい稼いだね
- ということは今年の税金はこれくらいだね
という流れで決まるものです。(※説明のためにかなり簡素化しています)
新入社員一年目などは前年の所得=あなたはこれくらい稼いだねという金額がない。
それなのに給料明細からは控除という名のもと、しっかりと税金が引かれている。
つまり、源泉徴収という仕組みは
正確な税金を算出するのは難しいから、先にざっくりともらっておいて(源泉徴収)あとから取り過ぎた分を返しましょう(年末調整)
そのかわり、面倒な税金の計算(確定申告)は会社がやりますよ
ということ。
安定した給料をもらえるということは、国や会社からしたら確実に税金を納めてもらうための仕組みに過ぎないのです。
大企業に勤務している人たちの中で、この仕組みを理解している人がどれくらいいるでしょうか。
③忙殺されるほどの仕事量=大手の看板があるからこそ
「なんでこんなに忙しいの…」
「もっとマシな仕事させてほしい…」
仕事に対するグチや不満は会社の規模に関わらず存在しますよね。
ただ、なぜ自分にその仕事が回ってきたのかを本当の意味で理解するのは、大企業の場合そこを辞めたあとになることが多いです。
- たくさんのお客さん(ユーザー、クライアント)から受注がくる
- 営業からたくさんの依頼が降ってくる
- 上司からたくさんの業務をお願いされる
もちろん大前提として、ある程度の仕事ができるからという理由はあります。
ただ、それはあくまでも
〇〇会社のあなただから
ということ。
大企業に数年も勤めていると、かなり多くの人と関わることになります。
関わる人は職種によって様々ですが、「大企業を辞めようかな」と悩む頃にはある程度の名刺が溜まっていたりするものです。
さて、数年が経ち、勤めていた大企業を退社したあとをイメージしてみてください。
あなたは転職したりフリーランスになったりして新しいことに挑戦しようとしています。
誰かの支援がほしいシチュエーションになった場合、
持っている名刺のうち、何人があなたを助けてくれるでしょうか?
たくさんの名刺を持っていても、多くの人の連絡先を知っていても、その大企業を辞めたあとも親身に話を聞いてくれる人はほとんどいないはずです。
大企業で働く中でもちろん仲良くしてくれる取引先、クライアント、ユーザーもいます。
でもそれは、大手の看板を背負った人間だから仲良くしてくれていたというだけかもしれません。
大企業を辞めてから改めてそのことに気がつく人は少なくないと思います。
まとめ:大手企業社員をうらやむ前に
大手企業への就職を経験してみて、もちろんそこには多くのメリットがありました。
しかしそれと同じくらい、今回お話したような「辞めたからこそわかった事実」もあります。
- 大手企業に就職するべきではない
- 個人事業主やフリーランスの方がいい
といっているわけではなく、あらかじめ知っておくことで視野が広がる可能性があると思うのです。
そして大手企業に勤務している人をうらやんでいる人は、もう少し違った見方もできるのでは…
そう思って今回の記事を書きました。
その道を進んだからこそわかること、その道を外れたからこそわかることがあります。
そんな経験者としての情報が、ほんの少しでも何かの役に立てばうれしいです。
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