デートをするたびに感じる違和感。
付き合っている中で発せられる強い言葉。
結婚してからも変わらない暴言。
それでも一緒にいたくて、相手との関係性をよくしようと頑張ってはいるものの、だんだんと何が普通で何がモラハラなのかもわからなくなっていく感覚。
これはモラハラかもと感じつつも、相手のことが好きだからこそどうしたらいいかわからない。
そんな混沌とした世界の中にいると、必ずといっていいほど行き着くのがこの問い。
モラハラって治るの…?
大好きで一緒にいることを選んだ相手です。モラハラさえ無くなれば、また楽しかったあの頃に戻れるのではないかと思うのも無理はありません。
では、本当にモラハラというのは治ったりするものなのでしょうか。
いや、絶対に何かしらの治療方法などがあるはずだ…!
今いる混沌とした世界から抜け出すべく、ここに一筋の希望の光を見出している人も多いはず。当時のわたしもそのひとりでした。
あくまでもわたし自身の経験談やここまで生きてきた中での統計になってきてしまいますが、先に結論を述べてしまいます。
結論:モラハラというのは治療できるようなものではない
残念な回答と思われる人も多いでしょう。
当時のわたしがこの結論をすんなり受け入れられたかと言われれば、確実にNOです。
ではなぜこのような結論を出したのか。
ここではわたし自身がその問いから答えに至るまでの経緯と、またその先の希望についてもまとめていきます。
精神科や臨床心理士、精神保健福祉士などの専門家ではないひとりのモラハラ経験者のまとめですが、あなたにとって少しでも何かの力になれば幸いです。
【モラハラの治療法】カウンセリングや第三者の介入
パートナーの言動がモラハラかもしれないと認識するに至るまでの経緯や期間は、人によってさまざま。
数回のデートで「あれ?おかしいぞ?」と感じながらもそのまま付き合い続け、結婚後に「あぁ、これはやっぱりモラハラだったんだ」と認識するケースもあれば、付き合っている段階では何も感じなかったのに結婚してから突然モラハラ言動に悩まされたというケースも。
わたしの場合はおそらく前者で、付き合っている当初からおかしいという違和感は感じていたものの、自分の直感や周りの意見を押さえ込んで結婚まで進んだというパターンです。
さて、そんなモラハラパートナーとの生活の中で、わたし自身もいつしかこう思うようになってきました。
- 良いところもあるんだし、モラハラさえ無くなれば…
- モラハラ=悪いことをしているということだけでも自覚してくれれば…
- 二人ではどうしようもないから第三者に入ってもらえれば…
と、好きになった相手だし優しいところや良いところもあるということ、モラハラは相手を傷つけること=悪ということを自覚してもらうこと、第三者が入ってくれることで冷静に話を聞いてくれるのでは、といった期待を持っていました。
では、これらはうまくいくのでしょうか。
結果は見えているといった声も聞こえてきそうですが、念のためひとつずつ掘り下げて考えてみましょう。
【美点凝視】好きになった相手の良いところだけを見すぎる
美点凝視とは、相手の長所や良いところを積極的に見ていこう、短所だって味方を変えれば長所になり得る、といった考え方のことをいいます。
モラハラパートナー相手に悩んでいるあなたも、きっと相手の良いところや長所を見つけることに重きをおいてきたのではないでしょうか。
ただ美点凝視が行きすぎてしまい、ときにはそれが自分自身を苦しめることに繋がっている場合もあります。
- いつも相手の意見ばかり通される→自分の意見をしっかりと表明できる人なんだ
- あなたに対して度々指摘する→言いづらいことも指摘してくれる人なんだ
- 相手は常に自分本位→自分を大切にできる人なんだ
言い方を変えれば、どれも短所と思われるポイントが長所に変わります。
でも、これらは本当に長所なのでしょうか。
いつも相手の意見ばかり通されるのはあなたの意見が尊重されていないということだし、度々あなたに対して指摘するのはあなたを相手の都合のいいように変えたいということ。
常に自分本位なのは、自分以外のことをおもんぱかれないということです。
モラハラパートナーに対して「モラハラさえ無くなれば…」と願うばかり、相手の短所をそのまま受け止めず、頑張って長所に転換してしまう。
これでは、相手がモラハラ言動に関連する短所を自省することもありません。
「モラハラ=悪」だと認識してくれるのではという期待
相手がモラハラというパートナーを苦しめることをやっている。
これはあなたの感じている事実です。
でも、それはあなただけの事実でもあります。
相手はおそらく自分のやっていることがモラハラであるとは認識していないはず。
ただ相手がそれを自覚さえしてくれれば、改善する努力もしてくれるのでは…というのがあなたの持っている期待だと思います。
では、もし相手がどの言動も本当にあなたのためを思ってやっていることだと認識している場合はどうでしょうか?
あなたに対して指摘するのも、あなたの間違いを正してあげるため。
自分の意見ばかり通すのも自分が正しいのだから、あなたのために正しい決断をしてあげている。
自分が好きなことをやって輝いていれば、たとえそれが周りを顧みないことでもあなたが喜んでくれるはず。
どれも相手にとってはそれが悪だとは思っていません。
そう、あなたと相手との事実の認識に大きな違いがあるのです。
それぞれ自分のやっていること、思っていることこそが正しいと思っているので、それを誤りだ、悪だと認識し直すのは相当厳しいのではないでしょうか。
たとえ相手に対して「あなたのやっていることはモラハラだよ」と一生懸命理由と合わせて伝えたとして、「あぁそうなのか、自分はこれまでそんなに酷いことをやっていたのか」なんて反省することはほぼ不可能。
それを認めてしまうと、相手は自分で自分を悪いことをしていたダメなやつ、とラベル付けしてしまう。
モラハラをするような、相手を下げて自分の価値を上げようとするようなタイプの人間に、そのラベル付けをさせることは難しい。
残念ながら、モラハラをおこなっている人がそれをモラハラだと自覚することは、とっても難易度が高いことなのです。
第三者に介入してもらう【カウンセリングへの道】
何度話し合いの場を設けてもうまくいかなかった、話し合いができなかった。
それなら誰か第三者に入ってもらえばスムーズに話ができるのではないのか。
試すことは悪いことではありません。
第三者として家族や友人、もしくはどちらのサイドにもつかないカウンセラーなどに話を間に入ってもらう。
ただし試した結果、おそらく大きく分けて次の2パターンに着地してしまうのではないでしょうか。
- そもそも第三者がいる席につかない
- 第三者がいる席につき、その場だけ取り繕う
わたしの経験では①でした。①のみ。②のフェーズまで進むことはありませんでした。
カウンセリングを受けようなどと言おうものなら「お前は俺を病人扱いするのか」「差別者」などと暴言を吐かれ、より良い関係性を求めての提案であるにも関わらず、やはり最終的にはわたしが悪者になる、という結果。
もちろん中には②のように第三者としてカウンセリングに赴くものの、その場だけではうまく取り繕い、あとから「お前が言ったことは嘘だった」「お前の言ったとおり行ってやったのに、お前のせいで嫌な気分になっただけだ」などと関係性が悪化することも。
このように、モラハラパートナーを第三者が介入する場に連れ出し、第三者の協力のもとモラハラを治療する・改善するのはかなり困難であるということがわかるかと思います。
モラハラは病気ではない【治療は難しい】
モラハラパートナーに見られがちなパーソナリティ障害が関係していることもありますが、いずれにせよ相手を治療の場に連れ出すには、相手自身が自分のパーソナリティを変えたい、あなたとの関係を改善したいと望む必要があります。
昨今ではモラハラ加害者の支援などもあるようですが、そういった支援もやはりモラハラをおこなっている相手が自らその場に足を運ばなければ支援も何も受けられません。
厄介なのは、モラハラというのは病気ではないということ。
本人が痛い、苦しいといった怪我や病気であれば、本人自ら率先して病院などに行くでしょう。
でも、モラハラというのはあくまでもあなたが相手の言動に対して感じていることであり、相手が痛みや苦しみを感じているわけではない。
相手はその気質を治したい、改善したいなどとは思っていない場合が多いです。
そんな相手にあれやこれやと理由を並び立てたとしても、モラハラをするような相手にとってそれこそがあなたからの攻撃と捉えられることの可能性の方が高いかも。
「お前は俺をおとしいれようとしている」
「私は一生懸命やっているだけなのに、カウンセリングを受けろだなんて、あなたのせいで精神的苦痛を受けた」
モラハラを改善するどころかさらに二人の関係は悪化し、より相手からの非難批判攻撃が強くなることだってあります。
ここまでお話した結果から、わたし自身もモラハラというのは治らない気質であること、有効な治療法などはないことを学びました。
では、やはりそれでも別れたくない場合、モラハラパートナーとこの先も続けていくにはどうしたらいいのでしょうか。
【希望?】モラハラは治らないと覚悟を決めること
どんなにひどいモラハラパートナーでも、別れたくないといった状況にあるからこそなんとか改善したい、治療できないかと悩むもの。
ただ残念ながら先にも記したように、モラハラを改善することはなかなか難しいのが現実。
それならばどうしたらいいか。それは、
相手のモラハラは治らないと覚悟を決めること
そして相手のモラハラが治らないとしても、この先一緒にいたいかどうかをあなた自身が決める他ありません。
元々はひとときでも好きになった相手です。
モラハラ気質があるからといって、別れずにここまで一緒に過ごしてきたのはやはり愛情や情が残っているから。
別れたくない、離れられないのならば、少なくとも相手のモラハラが改善するといった希望を持つのはやめたほうがいいかもしれません。
ただ、これは相手が変わらないからあなただけが頑張って変わらないといけない、なんてことではないので要注意。
それだとどんどんモラハラのアリ地獄にハマってしまいます。
そうではなく、ただ相手のモラハラは治らないものだと受け止めること。
受け入れて理解するなんてことはしなくとも、ただ相手のモラハラが改善することはないんだとその事実だけを知ること。
そしてそれでも相手と一緒にいたいのかを自分自身に問うこと。
それはこの先もずっと同じように相手のモラハラは続くということを自覚することでもあります。
そんな希望もないようなことを…と思いますか?
人間というのは期待すれば期待するほど、その期待が実らなかったときにたくさんのダメージを受けてしまう生き物です。期待と現実とのギャップに苦しくなってしまう。
ならばいっそ、期待をせず、相手のモラハラはこの先もずっと治ることはないのだと覚悟を決めることで、少なくとも期待と現実とのギャップに苦しくことはなくなる。
「それでも一緒にいたい」と思うのであれば、あとは変わらない相手とこの先どのように付き合っていくかをあなたが決めるだけです。
相手の人生ではなく、あなたの人生を誰とどのように生きていくか。
まずは現実を受け止め、自分の気持ちを再確認し、そしてそこからゆっくりと考えていくのでも遅くはないはずです。