配偶者からの暴力に怯えながら、誰かに助けを求めることもできず悩んでいる人はたくさんいます。
警察庁の発表によると、配偶者からの暴力事案等の相談件数は令和7年(2025年)に98,289件(前年比+3,352件、+3.5%)となり、DV防止法施行後最多を更新しています。
この数字はあくまで警察が把握した件数であり、実態はさらに多いと考えられています。コロナ禍の2020年度には外出自粛の影響でDV相談件数が過去最多を記録しました。その後も相談件数は高水準で推移しており、内閣府によると現在も増加傾向が続いています。
一方、世界のDV事情はどうでしょうか。
発展途上国や貧困層だけでなく、経済発展国の富裕層でもDV件数は増加しています。
そんな中、イギリスでは政府が発表したDV被害者を救おうとするある働きかけが話題になりました。(リンクはイギリスの記事のため英語です)
今回はこの秘密の暗号とともに、海外のDV事情や日本が参考にする部分について詳しくみていきましょう。
- DV被害者がパートナーに気づかれず助けを求めるために生まれた、イギリスの合言葉「アニーさん」の仕組み
- 日本を含む世界でDV被害が深刻な状況にあること、そして周囲の人間ができること
- 今この瞬間も誰かが発しているかもしれないSOSに気づき、動くための知識
DV被害者を救う薬局での合言葉
イギリスが2021年1月に発表した内容は、DV被害を受けている人にとって希望の光に見えたことでしょう。
イギリス政府が発表したAsk for ANIの詳細は次のとおりです。
- DV被害者は薬局へ行きなさい
- そして「アニーさんはいますか?」と尋ねなさい
- 気づいた店員が安全な部屋へとあなたを誘導します
- 彼らがヘルプラインへ通報してくれるでしょう
実はこのANI、英語にすると「Action Needed Immediately」となり「いますぐ行動が必要」=「助けて」という合言葉になっているのです。
この合言葉であれば、たとえDV夫とともに薬局へ行ったとしても気づかれることなく第三者に助けを求めることができます。
実際に薬局で「アニーさんはいますか?」と尋ねた後の流れはこんな感じ。
〜DV被害者1人ではなく、パートナーなどが連れ立ってきた場合〜
〜相談部屋にて〜
そして、必要に応じて警察や各所関係機関へのヘルプコールをしてくれます。
世界で増加するDV被害——その背景と現状
コロナ禍の2020〜2021年には、パンデミックの影響により、ロックダウンなど日本以上に規制が厳しくなった海外諸国。
これまでパートナーとは良好な関係を築いてきた人たちの中にも、積み重なるストレスからだんだんモラハラやDVを受けるようになったという声も多かったです。
ロックダウンともなれば外出することもままならない状況。DVパートナーと長時間同じ空間にいなければならないことがいかに危険なことかは想像にかたくありません。
最悪の場合、命を落としてしまう事例もあります。
本来であれば安心できるはずの家で常に戦闘状態を保つのは容易なことではありません。
世界情勢の混沌とした状況の中、経済的にも打撃を受けている人々の中には精神的な安定を崩し、ストレス発散のため妻に対し暴力をふるうという事例も。
世界にはウィルスや経済的不安との戦いに加え、配偶者との戦いに耐えている人もたくさんいるのです。
日本のDV相談件数——見えている数字の裏側
日本でも海外と同様、新型コロナウィルスの影響により2020年のDV相談件数が過去最多となっています。
コロナ禍の2020年度には外出自粛の影響でDV相談件数が過去最多を記録しました。その後も相談件数は高水準で推移しており、内閣府によると現在も増加傾向が続いています。
引用:日本経済新聞より
やはり日本でも、家にいる時間が増えたことが大きな要因になった事例もたくさんあるようです。これは男性からのDVだけでなく、女性からのDVも含みます。
そして悲しいのが、DV家庭においては子供への被害も高い割合で発生しているということ。未来ある子供たちまでDVの被害者になっているという現状は、私たちが目を背けてはならない大きな問題のひとつです。
数字として見えているDV被害の多くが、実際には表に出ていないと言われています。相談できずに一人で抱えている人が、統計の何倍もいるということです。
もし今あなたがDV被害を受けているなら、または身近にそういう人がいると感じているなら、以下のような相談窓口があります。
配偶者暴力相談支援センターは全国の都道府県に設置されており、匿名で相談ができます。「DV相談ナビ」(#8008)に電話すると、近くの相談窓口につないでもらえます。
また「DV相談+(プラス)」はオンラインや電話でも相談できる窓口で、24時間対応しています。パートナーがいる状況でも、チャット形式で相談できる点が特徴です。
「相談するほどのことじゃないかも」と思わなくていい。一歩踏み出すだけで、状況が変わることがあります。
日本でもアニーさんはDV被害者の救いとなるか?
個人的な見解は、正直まだまだ難しいかなと思います。
日本政府がDV被害者を救う合言葉を発信し、各所連携して行動するというのはなかなか簡単にはいかないでしょう。
であれば、私たち一人ひとりが行動することにより、DVに苦しんでいる人たちを助ける方法を探っていく方が早いかもしれません。
YoutubeやX(旧Twitter)などのSNSでは、無言で助けを求めることができるハンドサインが拡散されています。
DV被害者がパートナーに気づかれることなく助けを求めたとして、助けを求められた側がその意味を知らないとせっかくの勇気ある行動も救うことができません。
わたしたちがちょっとした情報を知っているだけで、救える命があるかもしれないのです。
「私の思い違いだったらどうしよう」「面倒なことに巻き込まれたくないな」
助ける側にも勇気は必要でしょう。
しかしあなたが見たヘルプサインは、もしかしたらDV被害を受けている人が最後の勇気を振り絞って出したSOSかもしれません。
間違っていたら「DVを受けていなくてよかった」でいいのです。
大切なのは、今この瞬間も必ずあなたの周りにDVを受けている人がいるという事実を知っておくこと。
DVは、外から見えにくいもの。
毎日笑顔で仕事をしている人が、家では暴力を受けているかもしれない。SNSにきれいな家族写真を上げている人が、夜は怯えているかもしれない。
だからこそ、「もしかして」と思ったときに声をかけられる人が周りにいることが大切です。
声のかけ方に悩む人も多いですが、「最近元気なさそうだけど大丈夫?」という一言でいい。解決しようとしなくていい。ただ「話を聞くよ」と伝えるだけで、追い詰められている人の心がほんの少し楽になることがあります。
アニーさんの合言葉のように、社会全体でDV被害者を守る仕組みが広がることを願いながら、わたしたち一人ひとりができることから始めていけたらと思います。
世の中からDVがなくなることは難しいでしょう。
それでも、ひとりでも多くの人がDVの苦しさから解放され、穏やかで安心して暮らせることを心から願っています。
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